雲一つない青空。
大切な友人が屋敷に尋ねて来る今日は、僕の心も晴れていた。
空の青さに見とれていたら、扉が来客の訪れを告げる。

「いらっしゃい茎くん」
「ほりくん…!お、お邪魔、しま…す…」

扉をあけると、綺麗な青色の髪の毛にくりくりとした目、眼鏡をかけた可愛らしい少年がおずおずと入ってきた。
彼の名前は茎。

「今日は誰もいないから、ゆっくりしていってね」
「うん…ありがとう…」

僕は、茎くんを薔薇園へと案内する。
ちゃんと手入れされた薔薇が、綺麗に眺められるこの場所は僕のお気に入り。

「わあ…すごい…」
「同居人が趣味でさ、ずっと懲りずにやってるんだ」

そっと茎くんが薔薇に手を伸ばす。
華に見とれていたら、血を流すことになった、だなんて今までに何度もある。
棘は刺さると意外に痛いんだ。

「茎くん、とげに気をつけてね?」
「あっ、うん。ほんとに…薔薇、きれい…」
「…それは同居人に言ってやってよ。
じゃあ、僕はお茶いれてくるからさ」


**

しばらくすると、薔薇の香りとはまた別の、紅茶の香りが風にのって運ばれてくる。
紅茶のする方向へ、勝手に足が動き出す。

「いいにおい…」
「あ、よかった。ちょうど入れたから、呼びにいこうとしてたとこなんだ。座って?」

促されるままに、ほりくんの正面にすわる。
真っ白なテーブルの上には、苺をあしらった可愛いティーセットとたくさんのお菓子。
甘いにおいと紅茶のにおいが入り混じって、いかにもお茶会ってかおりがする。

目の前のおかしを見ていたら、ほりくんがショートケーキわたしてくれた。

「ショートケーキ、すき?」
「うん…!わっ…美味しそう…」
「行きつけのお店でさ、自慢のケーキなんだ。食べてみてよ」
「あっ、うん…よかったら今度、僕に教えてほしいな」
「じゃあ、一緒にそこでお茶しよっか」
「うん…すごく、楽しみ、だな…」
「僕もだよ」

ほりくんはにこって笑いながらそういってくれた。
本当に…楽しみ、だな…でも、すごく緊張してしまう。

そう思って、どきどきしながらケーキを見ていたら、真っ白なケーキに銀色のフォークが吸い込まれていく。
そのまま口に含めば優しい味が広がった。

「おいしい…」
「でしょ?チョコレートケーキもあるから、よかったら食べてね?」
「そんなに、いいの…?」
「うん、もちろんさ」

美味しいケーキや紅茶をほりくんとお話しながら食べていたら、すっかり来た目的を忘れてしまっていた。
…渡さなきゃ

「…あっ、あの…ほり、くん…っ」
「…どうしたの?」
「これ…気に入ってくれると、嬉しい、な…」

ラッピングされた、青色の袋をわたす。

「開けてみてもいい?」

僕は恐る恐る頷く。
どうしよう、すごく、緊張する…もし気に入らなかったらどうしよう。

袋を開けたほりくんが、驚いた顔から嬉しそうな顔になる。
よかった、気に入ってくれたのかな。

「わぁ…可愛い!ありがとう茎くん前々から欲しかったんだ。カンボジャクのぬいぐるみ!」

カンボジャクのぬいぐるみと、ろーさちゃんを抱きしめて嬉しそうにいった。
僕はほっと胸を撫で下ろす。

「よ、よかった…喜んでもらえて…」

ほりくんは、器用にぬいぐるみとろーさちゃんを抱いたままケーキ食べ始める。
本当に、気に入ってくれたんだ…
でも、今は喜んでる場合じゃないんだ。
その前にちゃんと言わなきゃ…

「ほりくん、それで、ね…」






(えへへ。ありがとう茎くん)
(よ、よかったら、その……これからも…仲良く、して、くれたら、うれしい、な…)