材料、買いにきたときにはいいお天気だったのに。おかしいな。
私が買い物してる間にかわっちゃったのかな。
そういえば、びなが雨がふるから傘持っていけって言ってたかな。
そのままおうち、飛び出しちゃった。
また、怒られちゃうかな。飽きれられちゃうかな。
材料、濡らしちゃだめだから暫く雨宿りかな。

「びな、心配してるかな。」

両手に荷物を抱えて、はやくはやく止んでって心の中でお祈りしながら上を見上げるけど、そんな気持ちとは真反対にどんどんどんどん雨脚は強くなってく。

「言うこと、ちゃんと聞けばよかった」

だって凄くいい天気だったから、雨なんて降るわけないって思った。
今思えば、びなの言うこと聞かなくて良いことあった試しがないのに。
ばかばかばか!お家出る前の自分に戻って、傘は要るよ、雨はふるよって言ってあげたいけど、そんなことできるわけない。

「迎えにきて、くれないかな。」

我が儘だけど、心配性な弟なら、来てくれないかなって、ちょっと期待。

あ、でも、ぴちゃぴちゃって音がして、雨が止んだ・・・気がする。
だから大丈夫。これで帰れるんだ。

「よかった。これでやっと帰れる」
「本当です。僕が迎えにこなかったらどうするんですか。」
「わ・・・っ!迎えにきて、くれたの?」

可愛い、ピンク色の傘を差した弟は、私を捜しにきてくれたみたい。
傘を選ぶ暇もないくらい、必死に走ってきてくれたのかな。
そう思うと、なんだか、嬉しい。

「帰りますよ。今からケーキ作るんでしょう?」

困ったように笑うのは、彼の癖。

「うん!夜はバースデーパーティーだね!」
「・・・そう、ですね。
今年は一人で消さないで下さいね?」
「約束ね」
「そのことば、僕は毎年騙されてます」
「いいから!はやく帰ろうよ」
「ケーキも作らないといけませんしね」

やっぱりびなに似合わない、ピンク色の可愛い傘に入ると、まだまだ降り続きそうな雨のカーテンの中を二人一緒に歩いていった。




(今年も消しましたね!二人一緒って約束だったでしょう!)
(だって、びな待ってると遅いんだもん)
(・・・僕が、眠たい中、作ったのに・・・)