「おにーちゃん!」
「名無しちゃん!」

まだまだ小さい名無しちゃんをそのまま抱っこする。
…なんて今日も可愛いんだ。

「おにーちゃん遅刻だよお
名無しちょっと待っちゃったぁ」
「ごめんごめん、お兄ちゃんちょっと今日は遅れちゃった。
今日は名無しちゃんの方が早かったんだね」
「うんっ、お兄ちゃんのためにちょっと早く来ちゃったのぉ」

お兄ちゃんの、ために…
お兄ちゃんの、ために…?
僕の、ために…?

「な、なんて可愛いんだ名無しちゃん!さすがお兄ちゃんの妹だ!」
「わっ、お兄ちゃん苦しいよお…」

ぎゅーっと抱きしめると、ちょっと困ったみたいに名無しちゃんは言う。
お兄ちゃんはその可愛さに困っちゃうよ。

「お兄ちゃぁん…」
「…!ご、ご、ごめんね!」

我に帰って解放すると、ちょっと名無しちゃんは涙目だった。
それも可愛い。
お兄ちゃんそんな姿も大好きだ。

「あのね、お兄ちゃん。」
「なんだい?名無しちゃん」
「お兄ちゃんのために、普通のマフィン作ってきたのぉ、食べてくれるよねぇ?」
「勿論さ」

またお兄ちゃんのために、お兄ちゃんために名無しちゃんが作ってくれたのか。
普段名無しちゃんが食べないような、お兄ちゃんが食べるためだけに…! 可愛らしいバスケットから取り出された可愛いマフィン。
本当にお兄ちゃんのためだけに作ってくれたんだね、なんて健気なんだ。

ぱくり、一口マフィンをかじると微かに鉄の味がする。
けど、優しい甘みが口全体に広がった。
カインに食べさせてやったらきっと喜ぶだろうな。
隣で座って食べる名無しちゃんは、持って帰って食わせてやりたいと言ったら喜ぶだろうか。





いただきます!
(それ食べたらお兄ちゃん食べていいー?)
(…お兄ちゃんは名無しちゃんが食べたいかな)