ここはとある路地裏にある喫茶店。
この場に似つかわしくない、甘いかおりのする店は珍しく[CLOSE]の札を下げていた。
それもそのはず、今日は貸し切り。
三人だけの誕生日パーティー中なのだ。

今は真っ白な生クリームに真っ赤な苺が美味しそうな、バースデーケーキを切り分けていた。
普段はお客さん相手に出すものを、今日はウェイトレスに頼まれて作ったらしい。
隣でそのウェイトレスが待ちきれない、と机に身を乗り出していた。

「こら、まずはお客さんが優先です」
「ちょっとだけ…」
「駄目です。どうぞ、Holyさん」
「あ、ありがとう。本当にいいの?戴いちゃって」
「えぇ、せっかくですから食べていって下さい」

青色の少年はふわりと笑うと、またケーキを皿に乗せる作業へと戻る。

「びな!おおきめね!」
「はいはい、わかっていますから」
「ほりより大きいのね」
「大人気ないですよ」

と、言いながら、先程の少年…Holyに渡したくらいの大きさにきる。
そのうえに一つだけ、苺を余分においてやる。

「これで我慢して下さい、ね?」
「ぅー…わかっ、た…」

どこか不満げな顔をしながらも、諦めたようで皿を自分の前におく。
そして、苺をフォークでさしたところに、再びケーキを切り分けていた、びなと呼ばれた少年が言った。

「つまみ食いしたらケーキ没収ですからね」

すると、今にも食べようとして、手に持っていたフォークを何もなかったかのように元の場所に置き、膝のうえに手を乗せる。
視線は相変わらずいちごを凝視していたものの、食べる気はないようだった。

「すぐに僕の分なんて取り終わりますよ」
「びな、はやく!」
「びの、いちご一個もらっていい?」
「だめーっ!」

Holyがいちごを持っていこうとすると、その皿を高く上げて必死に取られまいとする。
それに苦笑しながら皿にケーキを盛りつけていくと、自分の前に置いた。

「ほら、食べますよ」
「いちごあげないもん!」
「…姉さん」
「…あっ!ご、ごめん」
「いただきます」
「いただきまーす」
「えへへ、いただきます」

もぐもぐとケーキを食べはじめると、しばらくは食器と皿が当たる音しかしなくなった。
そして、ばんびのが口を開く。

「びなのケーキ、おいしいね」

それを合図に、それぞれを声を発し始めた。

「うん、本当においしいよ」
「…ありがとう、ございます」
「当店自慢のバースデーケーキだもん美味しくないわけないけどね」
「あ、びののいちごいただき」
「あーっ!いちごぉー!」
「姉さんには僕のいちごあげますから、ほら」
「やだやだやだやだ」
「…姉さん」
「わ、わかった、もん」

ばんびなに宥められ、しょんぼりしているばんびの。
それでもケーキを一口食べると、そんなことがなかったかのように幸せそうな笑顔にかわった。

そんな兄妹の様子をみていたHolyがふと口を開いた。

「そういえば、お誕生日おめでとう」
「ありがとう!ほりもそろそろおめでとうだね」
「うん、そうなるかな」
「お誕生日おめでとうございます」
「もう祝われるような歳でもないんだけどね」
「そうおっしゃらずに」
「だって本当のことだしね」












BirthdayParty
(ほり今年でいくつなのー?)
(…それは聞いたら駄目だよ)